お便り

書簡(森田ゆい様)

森田 ゆい 先生、

2020年12月のむすびの会主催「山姥研究公演」では大変お世話になりました。古典芸能に共通する演目・山姥を鑑賞するだけでなく、研究者の解説、研究者と能楽師・日本舞踊家との鼎談、また邦楽囃子方も加わった観客との質疑応答と、参加した誰もが作品の魅力・深層に触れる機会が与えられた、印象深い公演であったと振り返っております。

先生とご一緒に活動するたびに凄いなと感じるのは、人脈の広さです。一生懸命のあまり視野も繋がりも狭くなりがちな私とは異なり、様々な分野の様々な年齢層の方々と心からのやり取りをしていらっしゃる。お名前‐ゆい‐の如くです。ご著書の「ようこそ伝統芸能の世界」も先生ならではですね。

先生が最近下さったメールで、先生の思考がさらに広がり世界に向かっていることを知りました。日本舞踊の可能性を考える中で、参考にさせていただければと思い、お尋ねいたします。何故、今のお考えに至られたのか、また具体的にどのように動こうとなさっておいでなのか、教えていただければと存じます。益々のお仕事の広がりを期待しております。

西川祐子

コメント

    • 森田ゆい
    • 2021.10.13 7:20pm

    西川祐子先生

    お手紙をありがとうございました。
    いつもメールでやりとりをさせて頂いていますが、お手紙を頂くとまた少し違う交流が出来て嬉しいです。

    早速ですが、私が過日送りました「ワールドワイドの視点から日本文化の特徴について紹介して、一般の人々のなかに既に持っている日本的な部分に光を当てる、気づかせる仕事がしたい」という言葉に対しての質問にお答えしたいと思います。
    まずどうしてこの考えに至ったのかについてですが、幼少期(小学1から3年生)に米国で過ごした体験が大きいです。日本について説明を求められる機会が多く、文化的な特徴について欧米の視点から興味を持ちました。
    そのような中で、既に自分の中に存在している日本的なものを見つけることが出来ると、急に自分が日本人であること。また昔の日本人にも通じているという感覚を味わうことで、(日本人生徒が他にいない環境下でした)自分の存在をしっかりと捉える事ができ、落ち着いて生活が出来るようになれたように思っています。
    自分の中に自国の文化的な要素を発見することは、精神の安定において非常に大きな効果を発揮することがあるのではないか、と私は感じていますが、如何でしょうか?

    具体的にどのように動くのかについては、色々と思案中です!全てをこちらに書くことは出来ませんが(笑)、19年前から継続している学校現場で日本文化を体験的に学ぶ機会を増やすNPO活動、大学での授業など教育の場での活動と、書籍や原稿など出版物を通した活動が中心になります。

    意外と大事なのではないか、と今考えていることに「こんな人が日本文化が好きというならば、自分も好きになってみたいな、と周りの人に思わせるキャラクターの存在」です。
    まずは自分の大学の授業を履修している学生たちに、自分がそのような存在になれる事を目指しています。

    沢山の人が自分の中に日本人としての文化的な要素を自覚すると、日本文化に対しての親密感が増す事が期待出来ますし、大きな目でみると世の中が安定して穏やかになっていくのではないかしら。というような希望を持っています。

    祐子先生にはこれからも沢山お話させて頂きたく、末永くお付き合いの程をよろしくお願い申し上げます!

    森田ゆい

    東京立正短期大学 准教授
    学習院女子大学、明治大学 兼任講師

    (写真は米国にいた頃です)

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